「レディエマの微笑み」の前作に当たる作品。
17年も前に描かれた初期作、なおかつ上下巻900P近くに渡るとあって、
期待と不安が入り交じりつつ即購入。
話は、現在の成功したヒロインのプロローグから始まり、
過去を振り返る形で、ヒロインの母の生い立ちから始まります。
有名ファッションデザイナーの母に顧みられることなく育った
ヒロインの母は、外見だけが幸せの鍵と信じ、
ヒロインを甘やかし放題に育てます。
序盤は、ヒロインの美貌と優雅な上流生活が語られ、
ヒロインは、なんとイギリスの皇太子にプロポーズされたりもします。
母の急死とともに財産を失いますが、
全然窮地に陥ったことを自覚していない楽天的なヒロインは、
映画女優になる話に釣られ、手持ちのブランド品を売って、小金を作り、
イギリスから、縁もゆかりもないアメリカへ渡ってしまいます。
撮影現場で話が違ったとわかり、怒って衣装のドレスのまま飛び出しますが、
道に迷い、行き倒れ寸前を、ヒーローに拾われます。
ヒーローは、試合のため、アメリカ全土を渡り歩くゴルフプレーヤー。
才能はあるのだが、ここいちばんに弱く、
いつもぎりぎりで優勝をのがしてしまう。
ヒロインは、外見ばかりを気にする虚栄心と非常識な行動で、
ヒーローを何度も激怒させ、放り出されそうになるが、
旅を続けるうちに2人は惹かれあい、関係を持つようになる。
他にすがるもののないヒロインは、それを恋と思いこむが、
ヒーローが、実は幼なじみと結婚継続中である事実が明らかになり、
大げんかして、ヒーローの元を飛び出す。
ヒロインはさらに、イギリスへ帰るために必要ななけなしの所持金と手荷物を失い、
文字通り着の身着のままの一文無しで、荒野に放り出されるはめになり、
そこで、今までの自分を捨て去り、
新天地アメリカで、新しい自分に生まれ変わることを誓います。
ここまでが上巻です。
母の生い立ちにまでさかのぼって、過去から語る形になる上巻ですが、
息をつかせないほど面白いです。
やることなすことが勘違いで、自ら崖っぷちへ突き進んでいく
ヒロインのエピソードの数々、そしてヒーローとの丁々発止のやりとりは、
のちの傑作とほぼ同等かそれ以上に面白いです。
さらに、ヒロイン母、ヒロイン、ヒーロー、ヒーロー妻などの過去が痛々しく、
胸をえぐるようなエピソードがちりばめられていて、
「泣かせ」の部分もすばらしく、さらにヒロインが「自己再生」を誓う当たりは
SEPの真骨頂とも言える部分の完成だと思いました。
が、後半。
下巻に入り、無一文で、なおかつヒーローの子供を
妊娠しているとわかったヒロインは、
たまたまたどり着いたラジオ局で下働きの仕事をして、
生き延びることになる。
ここで、生まれて初めて誰に頼ることもなく本物の苦労をしますが、
ここから浮上までが早すぎ。
実質数週間にすぎないどん底生活。ぬるいぬるすぎ。
そして10年後に話が飛び、ようやく冒頭の時間軸に戻って話が進みます。
ここからは、よくあるシークレットベイビーもの(といっても息子は9歳)になるわけですが、
ここからがつまらないです。
ヒロインは独力でTVキャスターとして成功を収め、
ヒーローはあいかわらず優勝を逃しつづける日々。
ヒロインの華やかな日々、再会したヒーローと息子の葛藤などが語られますが、
上巻に比べると生彩に欠き、構成も散漫で、
後のSEPとしてのスタイルが完成されていないことを感じさせられます。
SEPのキモは、調子こいたヒーローがヒロインへの愛を自覚して、
取り戻そうとしてドツボにはまり、ぎりぎりでヒロインの愛を勝ち取る部分にあると
思うのですが、そこに当たるエピソードも、内容、分量ともに薄くて物足りないです。
いろいろな意味で、野心作、そして
後のSEPとなる土台が作られた実験作なのだというのが感想です。
読み応えはたっぷりあるし、やはり他の作家にはないSEP独特の楽しさ、
面白さがあるので、読む価値はあり!ですが、
あくまで初期作、という位置づけで読むのがいいと思います。