クレンツの別名義の初期作品。
ヒロインは、高級なホテルの重役を務めるエリートキャリアウーマン。
搭乗した小型機が不時着し、パイロットが亡くなり、7人の乗客が遭難する。
ヒロインは優秀な管理能力を発揮して場を取り仕切ろうとするが、
ヒーローが主導権を奪い取り、全員の安全を確保する。
2人は救出前夜に一度結ばれるが、
ヒロインはそれを、群れのリーダーに従った本能的な行動、と
屈辱に感じていて、救出後、彼を振り切るように行方をくらます。
ヒロインは、会社の用意した豪華客船に乗り込み、休養を取ろうとするが、
そこにヒーローが後を追って乗り込んできて・・・。
序盤40Pが遭難の部分、短いページ数の中に、極限状態での遭難の細かい状況、
2人が結ばれたいきさつが、コンパクトに過不足なく描写されています。
そして、うって変わって救出後は、豪華客船の船旅に舞台がうつります。
この対比がいいです。
元強面のロサンゼルス市警、現心優しきペットショップオーナーという
2つの顔を持つヒーローがいいです。
クレンツのこの頃の作品にありがちな「1回寝たら俺のもの」論理を振り回し、
執拗にヒロインにつきまとう、このころのクレンツの典型的ヒーローパターンです。
思えばこの頃は「ストーカー」という言葉はなかったのかもしれませんが、
そのキーワードをかけると、とたんにロマンスではなく
サイコサスペンスになりかねないくらいのつきまといっぷりですw
避妊に関してのおおらかさっぷりも「エイズ」というものが
認識されていなかった時代を感じさせます。
ヒロインがとにかく頑なで、男性の支配を拒み、自立した女性であることにこだわるのも
当時の流行ですね。
そして、このころのクレンツ(ステファニー・ジェイムズ)はとにかくホット。
今でこそ性描写当たり前になっていますが、
当時、ここまでページを取って細密に性描写してある作家は他にいなかったと思います。
今読んでもかなり濃いかも。
そういう意味でもシルエット・ディザイアのまさに看板作家でした。
最近の作品はむしろ淡泊な描写しかしていないので、
編集主導の要望があったのかもしれませんね。